リウマチ治療のT2T(Treat to Taget)を解説

2017/10/17

治療

関節リウマチ治療における世界共通の目標、それがT2T(ティー・ツー・ティー)です。患者さんは聞きなれない言葉かもしれませんが、T2Tを理解することは治療を進める上で大切なことなので、紹介していきたいと思います。

T2Tの基本的な考え方

下記はT2Tの基本的な考え方です。この考え方をベースにしてリウマチ治療が行われています。

少し言葉が専門的なので、後ほど分かりやすく説明をしていきます。

 

引用

 

基本的な考え方

A.関節リウマチの治療は、患者とリウマチ医の合意に基づいて行われるべきである。

 

B.関節リウマチの主要な治療ゴールは、症状のコントロール、関節破壊などの構造的変化の抑制、身体機能の正常化、社会活動への参加を通じて、患者の長期的 QOLを最大限まで改善することである。

 

C.炎症を取り除くことが、治療ゴールを達成するために最も重要である。

 

D.疾患活動性の評価とそれに基づく治療の適正化による「目標達成に向けた治療(Treat to Target;T2T)」は、関節リウマチのアウトカム改善に最も効果的である。

 

Smolen JS, et al. Ann Rheum Dis.2010.69:631-637
竹内 勤:治療学 44(10):1081, 2010

 

解説していきます。

 

“A.関節リウマチの治療は、患者とリウマチ医の合意に基づいて行われるべきである。”

どんな治療の選択肢があるのか、なぜその治療を行うのかを患者さんも理解することが大切です。治療内容は、医師が一方的に決めるのではなく、患者さんも一緒に治療を選択していきましょう、という意味です。

 

“B.関節リウマチの主要な治療ゴールは、症状のコントロール、関節破壊などの構造的変化の抑制、身体機能の正常化、社会活動への参加を通じて、患者の長期的 QOLを最大限まで改善することである。”
関節リウマチ治療において、
●痛みや腫れ、こわばり、炎症などの症状をコントロールすること
●関節や骨、軟骨の破壊を起こさないようにする
●身体機能を正常に戻して、出かけたり、働いたり、日常生活を問題なく遅れるようにすることが治療のゴールになるという意味です。

 

“C.炎症を取り除くことが、治療ゴールを達成するために最も重要である。”
Bで述べた治療のゴールを達成するために、最も重要な方法は「炎症をとめること」。炎症を取り除くことで、症状のコントロール、関節破壊の抑制、身体機能の正常化、社会活動への参加が目指せる、という意味です。

 

“D.疾患活動性の評価とそれに基づく治療の適正化による「目標達成に向けた治療(Treat to Target;T2T)」は、関節リウマチのアウトカム改善に最も効果的である。”
関節リウマチの病気の勢いを評価し、その都度治療を見直して最適化していくことが、良い治療効果につながる、という意味です。

T2Tのステートメント

関節リウマチ治療のT2Tを実現するために、強く勧められることをまとめたものです。

 

引用

 

ステートメント

1.関節リウマチ治療の目標は、まず臨床的寛解を達成することである。

 

2.臨床的寛解とは、疾患活動性による臨床症状・徴候が消失した状態と定義する。

 

3.寛解を明確な治療目標とすべきであるが、現時点では、進行した患者や長期罹患患者は、低疾患活動性が当面の目標となりうる。

 

4.治療目標が達成されるまで、薬物治療は少なくとも3ヵ月ごとに見直すべきである。

 

5.疾患活動性の評価は、中~高疾患活動性の患者では毎月、低疾患活動性または寛解が維持されている患者では3~6ヵ月ごとに、定期的に実施し記録しなければならない。

 

6.日常診療における治療方針の決定には、関節所見を含む総合的疾患活動性指標を用いて評価する必要がある。

 

7.治療方針の決定には、総合的疾患活動性の評価に加えて関節破壊などの構造的変化及び身体機能障害もあわせて考慮すべきである。

 

8.設定した治療目標は、疾病の全経過を通じて維持すべきである。

 

9.疾患活動性指標の選択や治療目標値の設定には、合併症、患者要因、薬剤関連リスクなどを考慮する。

 

10.患者は、リウマチ医の指導のもとに、「目標達成に向けた治療(T2T)」について適切に説明を受けるべきである。

 

Smolen JS, et al. Ann Rheum Dis.2010.69:631-637
竹内 勤:治療学 44(10):1081, 2010

 

こちらもどんな意味なのか、大まかに説明していきます。

 

(1~3について)

関節リウマチの治療で最も重要なのは、まず「臨床的寛解」*を達成することです。患者さんの状態に応じて、ときには低疾患活動性が当面の目標になる場合もあります。

*臨床的寛解:関節の痛みや腫れがなく、炎症がない状態

 

(45について)

薬物治療は少なくとも3ヵ月毎に見直しましょう。中~高疾患活動性の患者さんは毎月、低疾患活動性または寛解が維持されている患者さんは36ヵ月ごとに、疾患活動性の評価を行い記録することが推奨されます。

 

(67について)

活動性の評価は、関節の診察を含むDAS、SDAI、CDAIなどの評価法で行う必要があります。また、骨や関節破壊の状況はどうか、生活機能が改善しているか、なども合わせて治療方針を見直していくことが求められます。

 

(89について)

設定した治療目標を変えずに達成を目指すことが大切です。治療目標に到達した後は、その状態を維持しつづける必要があります。評価法や治療目標は合併症なども考慮して設定しなければなりません。

 

(10について)

T2Tの考え方を患者さんと医師が共有し、同じの目標に向かって治療に取り組むことが大切です。

T2Tが寛解への近道となる

T2Tを採用している医療機関は、患者さんと医師が治療目標を共有し、同じ目標に向かって一緒に治療を進めていきます。そのためには、患者さんも病気について学ぶ必要がでてくるでしょう。そして、治療における不安や日常生活の不便について医師と共有する姿勢も大切になります。

 

T2Tを実践すると「治療方針が納得できない」「薬が合わない気がする」といった理由で治療をやめてしまうことがなくなり、結果的に早期に寛解を到達できるのです。ぜひ患者さんもT2Tの考え方を知り、前向きに治療に取り組んでいただきたいと思います。

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この記事の監修

湯川リウマチ内科クリニック 院長
日本リウマチ学会専門医・評議員
湯川宗之助

湯川リウマチ内科クリニック