肩・ひじ・手の手術

2017/08/25

治療

関節リウマチが進行して肩、ひじ、手が不自由になると、顔を洗う、歯を磨く、食事をする、・・・といった日常生活に必要な「当たり前の動作」が難しくなります。そんな時に検討するのが手術による機能回復。今回は、肩・ひじ・手の手術療法についてご紹介します。

肩の手術

関節リウマチでは肩関節に障害が出ることが多く、最初は腕が上げにくい、肩が痛いなど五十肩のような症状があらわれます。関節の破壊が進み、変形が起こると腕が挙げられなくなります。

 

滑膜切除術

ステージ12で腫れが長引くような場合に、内視鏡下の滑膜切除術を行います。

 

人工肩関節置換術、人工骨頭置換術

肩関節は、関節破壊だけでなく、骨萎縮が起こっている場合が多いため「人工骨頭」がよく使われます。痛みをとり、可動域を約90度まで改善します。

この手術は、破壊の程度が重くなく、腕がなんとか水平まで上げられるうちに実施する方が良い効果が得られる場合が多いです。

ひじの手術

ひじ関節の痛みが強くなり、動きが悪くなると、食事・洗顔・トイレ・起き上がる動作などが不自由になります。

 

滑膜切除術

ステージ12で腫れがつづき、触れると滑膜の増殖が分かるような場合に適しています。ひじの滑膜切除術は他の関節より効果がつづき、術後7年でも再発は10%以下という報告があります。

 

人工肘関節置換術

ステージ3以上で骨破壊があり、痛みで動きが悪くなっている場合に行います。痛みがなくなり、安定性が出て、動きもよくなります。

手首の手術

手首は指の動きの要となる関節です。ここが痛んだり不安定になると、持つ、掴む、といった動作が不自由になります。

 

滑膜切除術

関節破壊が進み、痛みが強い場合に滑膜切除術を行います。握力や回旋運動が改善するため、患者さんの満足度が高い手術です。

 

関節固定術

関節破壊が大きい場合は、骨移植をして固定術を行うと痛みがとれ、安定性がよくなります。関節の骨どうしをくっつけるため、関節は動かせなくなります。

 

伸筋腱(しんきんけん)の自然断裂への手術

「伸筋腱」は手首を伸ばす筋肉の腱です。滑膜に炎症が起き、なんらか物理的な刺激が加わると、伸筋腱が断裂することがあります。この断裂した腱を「腱移行術(隣の腱を移す)」によって再建します。

手指の手術

手指の変形は目立つため、美容を目的として手術を行うことがあります。ただし、変形していても、それなりに機能を果たせる人も多くいます。指をうまく使えるかどうか、不自由はどれほどかをよく検討する必要があります。

 

滑膜切除術

手指のように小さな関節で滑膜切除術を行うことはまれです。ステロイド薬の関節内注入法のほうが効果があるとされます。

 

指の変形への手術

ボタン穴変形

指の伸筋腱をつなぐ腱再建術という方法があります。

 

スワン・ネック変形

関節周囲の軟部組織の剥離術や、DIP関節(第1関節の部分)固定術があります。
MCP関節(第3関節、指の付け根部分)の亜脱臼などの変形には、インプラントを挿入する関節形成術が行われます。

 

親指のZ字変形

関節固定術やインプラント(シリコン製人工関節)を挿入する関節形成術があります。

必要な手術を総合的に判断していく

このように、肩、ひじ、手だけでもさまざまな手術があります。

手術を検討する時には、「関節の可動域(動かせる範囲)」「筋肉の力」「ものを支える力」「耐久性」「動かす速度」などで運動機能の評価を行います。

その他にも、関節リウマチの活動性、本人の要望、合併症や感染症の有無などを総合的にみて手術を行うかどうかを決めていきます。

 

この記事の監修

湯川リウマチ内科クリニック 院長
日本リウマチ学会専門医・評議員
湯川宗之助

湯川リウマチ内科クリニック