人工関節置換術:機能回復の切り札
2017/08/25

今回は、破壊された関節の機能を回復させる「人工関節置換術」についてご紹介します。人工関節置換術は、「痛くて歩けない」「このままでは寝たきりになってしまう」・・・そんな状態を劇的に改善する治療の1つです。
関節破壊が進行し、薬が効かない状態には「人工関節置換術」が有効
関節リウマチが進行すると、関節破壊が進み、軟骨もほとんどなくなります。(ステージ3くらい)こうなると骨と骨とがぶつかり合い、激しい痛みが現れ出します。このような状態になると、人工関節置換術がもっとも有効な治療法になります。
人工関節置換術のメリット
薬物療法やリハビリテーションを行っても病気が改善されず、ひざや股の関節破壊が進んで歩行が困難になることがあります。このような場合、人工関節置換術は救いの道です。手術することで再び歩けるようになるからです。
動く機能も改善され、行動範囲が広がりますので、生活の質(QOL)の向上にもつながります。痛んだ部分を改修するので痛みもなくなり、旅行するなど行動範囲が広がる方も多いです。なによりも「寝たきり」になることを予防することができます。
技術・素材・形が進化
かつての人工関節は、耐用年数が10年程といわれていましたが、現在は技術の進化により半永久的なものとなりました。手術法もより負担の少ない方法が開発されています。20~30代の若い患者さんでも、必要な場合は置換術を受け、運動機能を回復した方がよいという考えになっています。
術後もリハビリや薬が必要
人工関節置換術をする方は、関節リウマチがステージ3に進んでいるため、関節周囲の筋力が低下している場合が多いです。そのため、術後にリハビリで筋力を鍛えなおす必要もあります。
さらに退院後も薬物療法をつづけ、関節リウマチの炎症をコントロールすることが大切です。炎症の影響で骨粗しょう症が進行してしまうと、人工関節と骨との間にゆるみが生じてしまい、再手術が必要になることがあります。
3大合併症に注意
術後は人工関節置換術の3大合併症といわれる「人工関節の摩耗」「ゆるみ」「患部の化膿」に注意しなければなりません。
人工関節の摩耗
人工関節は摩耗しにくい素材でつくられていますが、それでも長い年月のうちに少しずつ擦り減っていきます。摩耗した関節を無理して使っていると、再手術を行うことになりかねません。また、他の関節に負荷をかけてしまうことも考えられます。定期的に人工関節の状態を確かめることが大切です。
ゆるみ
骨粗しょう症や摩耗、感染などにより、人工関節と骨の間に「ゆるみ」が生じることがあります。術後は必ず定期受診を受け、ゆるみがおきていないかチェックします。ゆるんでいる場合は、人工関節の入れ替え(再手術)などを検討します。
患部の化膿
人工関節に置き換えた部分は、血液の循環があまりよくないため、抗生物質や抗菌薬が効きにくくなっています。そのため、体内に虫歯や肺炎、膀胱炎などの細菌があると菌が増殖し、可能することがあるのです。
人工関節を入れた部分に、痛みや腫れ、熱っぽさが現れた時は要注意。感染の可能性があるので、医療機関を受診しましょう。
行われる部位
ひじ、ひざ、股でよく行われ、治療成績も優れています。