妊娠・出産時の関節リウマチの薬

2017/10/11

妊娠・出産

関節リウマチの女性のうち約1/3の方は2030代に発症しています。そのため、妊娠・出産を希望される方もたくさんいらっしゃいます。この記事では、妊娠前・妊娠中・出産後の関節リウマチ治療薬の投与について説明していきます。

非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)

非ステロイド性抗炎症薬は痛み止めとして利用されることが多いお薬です。

非ステロイド性抗炎症薬の種類はこちらの記事をご覧ください。

 

妊娠希望の方は服用しない方がよい

非ステロイド性抗炎症薬の催奇形性は否定されていますが、排卵や着床、胎盤血管の発育に必要なCOX-2を阻害するため、妊娠を希望している場合は極力頻度を減らすようにします。

 

妊娠後期は湿布薬も避けよう

妊娠後期に常用すると胎児毒性が起きる可能性があるため、注意が必要です。妊娠後期では湿布薬も含め使用を避けた方がよいでしょう。

この時期に関節リウマチが悪化して痛みがある場合は、下記のステロイドの服用を考えます。

 

服用しながら授乳できる

非ステロイド性抗炎症薬は母乳への分泌は非常に少ないので、服用しながらの授乳が可能です。

ステロイド薬

ステロイド薬は、関節リウマチの初期に痛みをコントロールする目的で短期間だけ使用することが多くなっています。

ステロイド薬の特徴はこちらの記事で紹介しています。

妊娠初期の服用はリスクがないわけではない

妊娠中のステロイド薬による催奇性の増加はないと考えられていますが、妊娠初期の使用により口唇口蓋裂のリスクは少ないながらも増加すると考えられています。

 

妊娠中の服用は、胎盤通過性の低い薬を選択する

胎児への影響として発育遅延があるため、妊娠中に服用する場合は、胎盤通過性が低いプレドニゾロンを優先的に使用します。

 

ステロイド内服しながら授乳ができる

妊娠後期に継続してステロイドを使用していた場合は、出産後、お子さんの腎機能に注意が必要です。お子さんが母乳から吸収できるステロイドの量は、母体摂取量のごくわずかなので、ステロイドを内服しながら授乳することができます。過度に不安にならないことが大切です。

 

抗リウマチ薬(DMARDs)

メトトレキサートは中止する or 他剤へ切り替え

現在、関節リウマチの治療の中心となっているメトトレキサート(MTX)は、流産や奇形のリスクがあるため、妊娠中の方や妊娠を希望している方、授乳している方は服用してはいけません。

 

MTX服用中の方が妊娠を希望する場合、服用は中止するか、他剤へ切り替えることになります。MTXは体内に長時間とどまる性質の薬ですので、妊娠の計画は中止後3カ月以上経ってからまたは最低1回の月経をみてからとします。

 

MTX以外の抗リウマチ薬を服用

サラゾスルファピリジン

さまざまな研究によりリスクが少ない薬だと分かっています。妊娠を考える関節リウマチ患者さんの第一選択薬です。

 

ブシラミン

発売から20年と長く使われている薬です。有害情報がないので、妊娠を希望している方へ使用できると考えられています。

 

母乳栄養(授乳)と服用

母乳栄養(授乳)できる抗リウマチ薬

◇サラゾスルファピリジン

 

母乳栄養(授乳)できない抗リウマチ薬

◇メトトレキサート
◇ミゾリビン
◇レフルノミド

 

生物学的製剤

妊娠判定までエタネルセプト(エンブレル)を使用する場合がある

妊娠希望する患者さんで、抗リウマチ薬であるサラゾスルファピリジンやブシラミンが無効であった場合、次に検討されるのが、TNFα阻害薬のエタネルセプトです。

しかし、長期的な胎児への影響の研究が不十分であるため、現段階では妊娠判定までの使用にとどめます。

 

TNFα阻害薬は授乳が可能

TNFα阻害薬は授乳を介して、お子さんに吸収される可能性は非常に低いので授乳は可能と考えられています。特にエタネルセプトでは母乳栄養児の血液検査からもそのことが明らかになっています。

 

アクテムラ、オレンシアは避ける

オレンシア、アクテムラはデータが乏しいため投薬は避けます。

 

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この記事の監修

湯川リウマチ内科クリニック 院長
日本リウマチ学会専門医・評議員
湯川宗之助

湯川リウマチ内科クリニック