「1987年 米国 分類基準」の問題点

2017/09/01

診断

かつて関節リウマチの診断には、1987年に作成された米国リウマチ学会の分類基準が世界的に使われていました。しかし、この分類基準には問題があり、2009年に新しい分類基準へと改訂されたのです。今回は長年使われていた1987年分類基準の問題点や、新しい分類基準との違いなどを紹介していきます。

世界中に普及したが、早期診断には向いていない

まず、1987年分類基準はどのようなものか、みていきましょう。

 

引用

関節リウマチ分類基準(米国リウマチ学会 1987年改訂)

下記の7項目のうち4項目以上が認められる場合、関節リウマチと診断。

1.朝のこわばりが1時間以上つづく(6週間以上)2.3箇所以上の関節炎(6週間以上)

3.手の関節(手首、中手指節、近位指節間関節)の関節炎(6週間以上)

4.対称性の関節炎(6週間以上)

5.リウマトイド結節

6.血清リウマトイド因子

7.レントゲン異常所見(手/指関節の骨びらん)

Arnett, F.C. et al. : Arthritis Rheum 31(3):315, 1988.Copyright(c)1998 John Wiley & Sons, Inc.

 

ご覧いただいた通り、7つの項目があり、うち4つを満たすと関節リウマチであると診断していました。 項目のうち、1の「朝のこわばり」は患者さんの自覚症状です。2~5までは医師の診察によってわかります。6は血液検査、7は画像検査によって判断します。

 

この診断基準が普及し、関節リウマチの診断は格段に進みました。しかし、各項目は病気が進行した段階のもので、早期の関節リウマチ患者さんの多くは、この基準を満たさず「早期診断が難しい」点が長年問題視されていました。

関節リウマチは、早期診断・早期治療の時代へ

近年、発症早期から抗リウマチ薬や生物学的製剤を用いた治療を開始すれば、関節の破壊を抑えられることが分かり、早期診断の重要性が叫ばれるようになってきました。そこで、米国リウマチ学会と欧州リウマチ学会が共同で、2009年に新しい分類基準を発表したのです。

 

新しい関節リウマチの診断基準(2010年ACR/EULAR分類基準)を解説

 

新しい分類基準は、1ヵ所以上の関節に腫れがあれば関節リウマチの検査を進めていくので、関節リウマチの早期診断に有用だとされています。関節リウマチの早期診断の重要性が、分類基準にもあらわれているわけですね。

 

 

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この記事の監修

湯川リウマチ内科クリニック 院長
日本リウマチ学会専門医・評議員
湯川宗之助

湯川リウマチ内科クリニック